塗装後の雨漏り防止に「縁切り」
日本の多くの住宅の屋根材として採用されている「化粧スレート」
コストパフォーマンスに優れた屋根材ですが、塗装メンテナンスをする際に「縁切り」という作業が非常に重要になってきます。
この作業を省いてしまうと、雨水の排水が正常に行われず、屋根の寿命を早めてしまいます。
スレート屋根とは
化粧スレート(スレート瓦)は近年の日本の住宅で最も普及している屋根材で、カラーベストやコロニアルといった商品名で呼ばれることもあります。
化粧スレートの大きな特徴は、安価で耐熱性や耐震性といった機能性に優れているという点です。
ですが、他の屋根材に比べると定期的な塗装メンテナスが必要になります。
「縁切り」とは
スレート屋根の塗装において最も重要な工程が「縁切り」になります。
スレート屋根を塗装すると、屋根材の重なりに塗料が入り込み、隙間が埋まってしまいます。
塗膜で埋まってしまった隙間を皮スキと呼ばれる工具やカッターで切り離し、隙間を作る作業を縁切りと言います。
縁切りの役割
縁切りの説明を読んで、「屋根材の隙間が埋まったままの方が雨水を防げるのではないか」と思った方もいるのではないでしょうか。
この「隙間」こそが、スレート屋根を雨水から守る重要な役割を果たします。
縁切りの役割は主に3つあります。
1. 雨漏りを防ぐ
縁切りの最も重要な役割は、雨漏りを防ぐことにあります。
通常、屋根に降り注いだ雨水はスレート屋根の隙間を抜けて外に排出される仕組みになっています。
しかし、隙間が埋まってしまうと雨水を排出できずに屋根内部に溜まってしまい、いずれ雨漏りの原因となってしまいます。
2. 内部結露を防ぐ
縁切りには内部結露のを防ぐ役割もあります。
近年の高気密高断熱住宅では、室内と屋外が遮断されることで高い断熱性が実現し、外からの熱が伝わりにくくなります。
夏は暑い外気を遮って冷房の涼しさを保ち、冬は冷たい外気を遮り暖房の効果を保ちます。
非常にメリットの多い住宅構造ですが、デメリットもあります。それが内部結露です。
結露は建物の内側と外側の気温差が大きく生じたときに発生します。
屋根の場合、建物内の暖かい空気は上昇し屋根裏が暖かくなりやすく、建物の外側は外気で夜は冷たくなりやすいので、その温度差により結露が発生します。
3. 屋根下地材の劣化を防ぐ
雨や結露によって屋根内部に溜まった水は、断熱材や木材を腐食させる大きな原因となってしまいます。
屋根下地材が劣化することで雨漏りをはじめ、様々な被害が発生するようになるのです。
<スレート屋根の断面イメージ>
従来の縁切り工法の問題を解決した「タスペーサー」
縁切りはスレート屋根の住宅を長持ちさせるためには非常に重要な作業ですが、従来は屋根材の隙間に埋まった塗料を人の手でひとつずつ切り離していく非常に手間のかかる作業でした。
この手間のかかる作業の問題を解決したのが、セイム社の発売するタスペーサーです。
下塗りが終わったあとに屋根材の隙間にタスペーサーを差し込むことで、必要な隙間を確保することができます。
工具での縁切りを不要にし作業効率を大幅に向上させたタスペーサーは、現在では縁切り作業のスタンダードとなっています。
縁切りやタスペーサーが不要な場合もある
タスペーサーは、条件によっては使用できない(必要がない)場合もあります。
経年劣化により屋根材が反り隙間が大きくなっている場合です。
屋根材の隙間が4mm以上ある場合は、タスペーサーを差し込んでも抜け落ちてしまうので使用することができません。
このような場合は塗料で隙間が埋まる可能性も低いため、通常の縁切りの必要もないかと思いますが、屋根材自体が寿命を迎えている可能性もありますので、塗装前に劣化診断をされることをおすすめします。
また屋根の勾配が急なスレート屋根は、水分が流れていきやすく水はけがよいので、こちらも縁切りの必要はないでしょう。
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